6月23日。目覚めると、東京の空は相変わらずうっとうしい梅雨空だった。 仕事に行かなくなって早くも1週間。だけど、僕の心はちっとも晴れず、暗闇の中だった。 そんな中、ふと向かいたくなったのがやっぱり北。それも北の北。 日本の果てまで行きたくなった。僕は「ぐるり北海道フリーきっぷ」を握りしめ、 久しぶりに早起き。東府中駅、朝5時36分発の急行新宿行きから旅が始まった。 新幹線に乗るために、新宿で中央線に乗り換え、東京駅へと向かう。 まだ朝6時だというのに、相変わらず新宿駅はすごい人で、 結局中央線は、御茶ノ水駅まで座ることが出来なかった。 東京駅では、さっそく新幹線のホームに向かうことにした。 僕が乗る新幹線は、「はやて・こまち1号」の「こまち」の方の車両だ。 本当は「はやて」で八戸まで行きたかったんだけど、 今日は「大人の休日パス」という、60歳以上の人たちが2日間、新幹線・特急乗り放題で 12000円という格安なきっぷが使える日だったらしく、 「はやて」の指定席は満席。「こまち」は喫煙車だけ、唯一窓際が空いていたので、 「こまち」で盛岡まで行き、切り離し作業を行っているうちに、 「はやて」に乗り換えるという、少し面倒くさいことになってしまった。 ともかく、満員の乗客(しかもじいちゃん、ばあちゃんだらけ)を乗せた新幹線は、 定刻どおり、東京駅を発車していきました。 |
東京駅で発車を待つ、「こまち1号」 |
「はやて」と連結した「こまち」は、東北新幹線内は時速275キロという超高速運転。 大宮を出ると、次は仙台なので、地元の郡山は福島は見事に通過して行った。 猛スピードで流れる車窓に圧倒されていると、あっという間に盛岡駅に到着した。 ここで後ろにくっついている「はやて」に乗り換えなくちゃいけない。 切り離し作業で賑わうホームを尻目に僕は走った。切り離し作業の写真は撮ったけどね(笑) なんとか「はやて」の車両に乗り込むと、なんとデッキまで人が溢れるほどの大混雑。 「まあ、指定席を取ってるからいいや。え〜っと・・・6号車1番のAは・・・」 おーっ!!もう座ってる人がいるじゃん・・・。しかもヨボヨボのおばあちゃんが・・・(汗)。 僕はもう一度、自分の持っている指定席券を確認した。するとやっぱりそこで合ってる。 だけど・・・その、おばあちゃんは他の数人のグループで旅行にきてるらしく、 他のおばあちゃんたちが、その席の周りにみんなで話しながら立っていた。 さすがにそこに堂々と入っていって座る気持ちにもならず、 「ここの指定席、よかったら使ってください」といい、 僕はおばあちゃんグループに指定席券を渡した。みんな喜んでくれた。よかった(^^) 八戸までは、途中2駅停まって40分ぐらい。初めて乗った区間だけど、 ほとんどトンネルばっかりで、特に感動はなかった。 ここで、デッキに立っていたことで幸運が訪れる。 次に乗り換える「スーパー白鳥」に、いち早く乗換えができるのだ。 「スーパー白鳥」も実は指定席が取れず、「こんな6月の平日なのに、なんでだろう・・・」 と思っていたら、おじいちゃんたちに全て押さえられてしまっていたのだ(笑) トンネルを何回もくぐって、「はやて」の車窓がようやく広がった。遠くに大きな街が見える。 終点「八戸」に到着。さすがに開業したばかりだけあって、とっても新しい駅舎だった。 これまで何度となく通ってきた八戸駅だけど、その時の面影は一切なくなっていた。 盛岡からは「はやて1号」に乗り換えます。切り離し作業中。 八戸駅では、一気に人が降り、そのままスーパー白鳥へと流れる。 僕はそのトップを走り(笑)、なんとか自由席の窓際をゲット。 その後、次々におじいちゃん、おばあちゃん集団が乗り込み、 ついにはデッキどころか車内まで人があふれかえる大変な混雑になってしまった。 譲ろうかとも思ったけど、今回は自分の心を元気にさせるための旅。 今回だけは自分のことを優先させたっていいじゃんか、と思って譲らなかった。 スーパー白鳥は「三沢」に停車。ここで小牧温泉への観光客がどっと降りて、 車内は少しだけゆとりが出来た感じ。けど、まだまだ立ち客が多い。 「野辺地」では、1両編成の快速「しもきた」大湊行きが隣のホームに止まっていて、 逆に乗ってくる客の方が多かった。 野辺地を過ぎると、車窓の右手に真っ青な津軽湾が広がってくる。 このために右側の座席を確保したんだもん、ここで譲るわけにはいかない(笑) 空は東京とは打って変わって、ぬけるようなきれいな青空。 太陽に照らされて、キラキラ光る海がとってもきれいだった。 おじいちゃん、おばあちゃんも、みんな海を見ていた。写真を撮りまくる人もいた。 ちょうどその頃、ずっと八戸から隣に乗っていたおじいちゃんに声を掛けられた。 「学生さんの一人旅かい?」(まだ学生に見られてちょっとだけ嬉しかったりして・・・) 「う〜ん・・・学生・・・ではないんですけど、一人旅です。実は仕事辞めちゃって・・・」 「じゃぁ、今流行りのフリーターってやつか。はっはっはっ。」 「アハハハ・・・そうですねぇ。」(笑えないよ・・・)。 そのあとは、青森に到着するまで説教されてました(笑)。 |
青森駅に停車中の特急「スーパー白鳥」1号。ここで進行方向が変わる。 |
青森駅でほとんどの乗客が降りてしまい、車内は一気にガラガラ状態に。 それもそのはず。おじいちゃんたちが持っている「大人の休日パス」は、 JR東日本内のJR線が乗り放題の切符だからだ。 それにしてもこんなにたくさんの乗客が青森まで来て、一体何をするんだろう?? 下北半島なら野辺地で下車するだろうし、弘前まで行くなら「つがる」に乗るだろうし・・・。 う〜ん、不思議。ちなみに隣に座ってたじいさんは、そのまま日本海側を下って、 今日中に東京に戻るとのことでした。鉄道ファンだったのかな?? 青森から函館は、進行方向がこれまでと変わるので、 乗客が協力して座席を反転させます。ガラガラなので、4人分の座席を作って、 1人占めできました。さっきまでの混雑がまるでウソのようなガラガラぶり。 普段は八戸からずっとこんな感じなのかもね。今日は異常な混み方だったもん。 「スーパー白鳥」は青森を出て20分ほどで次の停車駅、「蟹田」に到着。 ここで列車も再び海に出て、波がすぐそこまで迫るほどまで近づいてくる。 蟹田では「大人の休日パス」の最後の乗客グループが下車した。 蟹田駅に到着する直前で、車窓右手に津軽海峡の海が広がる。 蟹田を過ぎると、列車は一気に内陸に入って行く。青森県最後の駅「津軽今別」に到着。 ここでJR東日本からJR北海道に管轄が変わり、いよいよ青函トンネルへ! 線路も複線になり、「スーパー白鳥」が急激にスピードを増してきた。 僕は車両の一番前まで行き、最前部の展望窓から青函トンネルに入る瞬間を見届けた。 トンネルに入ると列車はさらにエンジンを唸らせながら、猛烈なスピードで走り出した。 これがJR線内で日本最高速度となる時速140キロ運転だ。 展望窓からのぞいていると、あまりの速さにあっという間にトンネルを抜けそうな気もするが、 そこは世界最長の青函トンネル。なかなか出口は見えてこない。 途中、竜飛海底駅と吉岡海底駅、そしてトンネル最深部(ちょっと照明の色が変わる) も見届けることが出来た(^^) これまでの「はつかり」や「海峡」では展望窓がなかったので、 21回目の青函トンネル通過で、晴れてその全貌を見ることができた(笑) |
青函トンネルの中をスーパー白鳥が猛スピードで駆け抜ける。 |
トンネルを抜けると・・・そこは「北海道」。ついに12回目の北海道にやってきてしまった。 北海道最初の駅、「知内駅」を通過すると、「スーパー白鳥」はスピードを再び緩め、 北の大地をゆっくりと走り出した。風景もどことなく雄大で、6月なのに空はどこまでも青く、 北海道に来たんだなぁ〜ということをしみじみと実感させられる。 「スーパー白鳥」は北海道最初の駅、「木古内」に停車。ここからは海に出る。 北海道南端の海岸線をゆっくりのんびり走り、次第に函館山が見えてきた。 今や、北海道の玄関口と言えば圧倒的に「新千歳空港」なんだろうけど、 12回の北海道旅行で、12回とも列車で北海道を訪れている僕にとっては、 やっぱり北海道の玄関口は「函館」。 車窓はしばらく寄り添っていた海から一気に街の風景に変わり、 東京駅から6時間16分、ついに「スーパー白鳥」は終着駅の函館駅に滑り込んだ。 まもなく取り壊しが始まる4代目函館駅舎。後ろには新しい函館駅舎がそびえ立つ。 3ヶ月ぶりに訪れた函館駅は、最近工事が完成したばかりで、すっかりきれいになり、 階段のない完全バリアフリーのホームなどとても機能的な駅に生まれ変わっていた。 中には書店や土産物店、飲食店など数多くのお店が入り、 まだ新しいこともあって、地元の人もたくさん訪れているようであった。 一方で、今までの古い駅舎は間もなく取り壊しの工事が始まるそうで、 これまで何度となくこの古い駅舎の函館駅を訪れてきた僕にとっては、 ちょっと寂しい感じもした。これも時代の流れだね。 函館駅からは、さらに特急を乗り継ぎ北を目指す。 まず目指したのは新日本三景のひとつにもなっている大沼公園。 本当は「スーパー北斗」が良かったんだけど、今回は「北斗」だった。1駅だし、まぁいいや。 ディーゼルの音を高々と上げ、「北斗」が函館駅を発車。 どんどんスピードが上がっていき、あっという間に街を抜け、山に入っていった。 パッと眺望が広がったと思うと、そこはもう大沼公園。 車掌さんが「ただいま、列車は大沼国定公園内を走行しております。左に見えておりますのが、 小沼でございます。」とアナウンスまでしてくれた。さすが北海道だね! 函館からおよそ20分で、大沼公園駅に到着。僕の他にも10人ぐらいが下車しました。 |
函館駅から乗車した特急「北斗」。最高速度120キロ。見かけよりずいぶんスピードを出します。 |
大沼公園駅を降りると、外はとってもいい天気。 大沼公園を訪れるのは、これで5回目ぐらいになるけどこんなに晴れたのはたぶん初めて。 晴れてるのに、ひんやりとしている空気がまた清々しくてとっても気持ちがよかった。 駅から大沼公園までは歩いて5分ほど。今日は駒ヶ岳がとってもきれいに見えた。 大沼公園は、沼の中にたくさんの浮島があって、まるで松島のような感じだ。 近くの島は、橋で結ばれていて、20分コースと50分コースがあるので、 僕は時間もあることだし、50分コースを歩くことにした。 観光客のほとんどは、公園全体が見渡せる入口付近で写真を撮って、 せいぜいモーターボートか遊覧船に乗るぐらいなので、 ハイキングコースはとっても静かで最高に気持ちが良かった。 鳥のさえずりと、岸に打ち寄せる小さな波の音、そしてひんやりと涼しい風の音。 あまりに気持ちが良かったので、思わず立ち止まって深呼吸したり、 ベンチに座って駒ヶ岳を眺めたりした。傷ついた心がなんとなく癒されていく感じがした。 けっきょく50分コースなのに、90分もかけて回ったりして・・・(笑) 大沼公園駅舎。丸みのある三角屋根が印象的です。 |
大沼公園と駒ヶ岳。そのコントラストがとてもきれいです。 |
たっぷりと大沼公園を観光した後は、再び北を目指します。 乗車する列車は、またしても「北斗」・・・。「スーパー北斗」の方が本数が多いはずなのに、 どうして僕が乗る列車はいつも「北斗」なんだろう・・・。まぁ、別にいいけどね。 「北斗」は大沼公園を出ると、ぐるっと駒ヶ岳の周りを回るように走った後、 一気に森駅で海に出る。森駅のホームの東側は、すぐに太平洋の大海原だ。 もう窓を開ければ海の水が触れるぐらいまで列車は海に近づきます。 その後は、車窓の右側に延々と太平洋が広がる絶景が続き、 僕はその車窓風景に釘付け状態(笑)。きっとそうなる人は多いはず!!(笑) 大沼公園から2時間ほど、ようやく大きな街が見えてきた。東室蘭に到着。 ここで久しぶりに多くの乗客があった。 ここで室蘭行きに乗り換えて、地球岬にでも行こうかと思ったけど、 時間がすでに夕方で、しかも外が寒そうだったので見送り。だって本当に寒いんだもん・・・。 東室蘭を出ると、住宅街の中をしばらく走った後、山の中へと入っていく。 「まもなく登別に停まります」と車掌さんのアナウンスが入った。 う〜ん、どうしよう。登別はもう4回ぐらい来てるし、 せっかく北海道に来たのなら行ったことのない温泉に行ったほうが・・・。う〜ん。 だけど4回来てるだけあって、やっぱり登別はお気に入り(笑) 結局、「今回は行ったことのない場所に行こう」と毎回思いつつも、 大沼公園は5回目。登別もついに5回目の下車となった(笑)。 森〜東室蘭まではこんな感じの景色が延々と続きます。まさに絶景です。 登別駅から登別温泉までは路線バスで20分ぐらい。 駅前にはいつも温泉行きのバスがちゃんと列車に接続して待っていてくれます。 バスはいつものことながらガラガラ(笑)。みんなあまり鉄道では来ないのね・・・。 駅を出発すると、バスは海をバックに一気に山を登っていき、 途中、「温泉中学校前」などいかにも登別らしいバス停を通ったりしながら、 登別温泉を目指します。家一つないような細い山道に入って、しばらくすると、 突然、大きな建物が林立してるのが見えてきます。登別温泉到着〜♪ 4回目の登別温泉だったので、今回はどこの温泉に入ろうかなぁと迷った挙句、 共同浴場の「夢元さぎり湯」に入ることにしました。 ここは露天風呂は残念ながらないんだけど、2つの源泉が楽しめる上に、 お湯は贅沢な掛け流し!ジャブジャブと湯船から温泉が溢れ出していました。 旅行が始まって最初のお風呂なだけに気分はサイコ〜! 空いていたので、思わず泳いじゃったりして(笑)。すっかり疲れが取れた感じがしました。 今日1日の汗を流した後は、再びバスで登別駅に戻り、札幌に向かいます。 ここでまたしてもやってきたのは特急「北斗」。。。もう「スーパー」に乗りたいのにぃ! 憤慨しつつも、札幌駅に到着(笑)。相変わらず、ものすごい人だぁ〜。 ここだけは大自然北海道の中でも別世界の人の多さです。 だけど、東京と違って人が多いのにゴミゴミしてないところが好き。道はどこまでもまっすぐ。 駅のトイレで歯磨きとコンタクトレンズの洗浄を済ませて、 今夜の宿、夜行の特急「利尻」稚内行きに乗り換えます。 「ぐるり北海道きっぷ」は寝台車には乗れませんが、北海道には座席の夜行列車が、 札幌から道内各地に走っているので、これが宿代わりに使えてとっても便利! しかも今回の「利尻」はなんと「お座敷車両連結!」と時刻表に書いてあったので、 これはラッキー♪と思って、お座敷を指定させていただきました。しかも一番端っこ(笑)。 |
特急「利尻」のお座敷車両。きちんと布団と枕もついているのでぐっすり眠れます。 |
特急「利尻」は、旭川までは通勤列車&終電の役目も果しているので、 普通車の方はサラリーマンたちでかなりの混み様だったけど、 お座敷車両の方は南稚内と稚内で下車する人専用の車両なので、 とってものんびり寛げました。しかも指定席をみんな駅員任せで取った人ばかりだったので、 僕以外は、ピッタリ端から寄り添うように並んで寝ていました(笑)。 (画像の通り真ん中だけが広〜く空いています・・・)。 目が覚めた頃には、北海道の大自然が広がっていることを夢見て、おやすみなさい☆ |