様似駅を出たバスは、一路、えりも岬のあるえりも町へと向かいます。
僕を含めて5人の乗客を乗せて、バスは様似駅を出発しました。
車窓は右手にひたすら太平洋を見ながらの道中です。
道路には雪もまったくなく、まるで春のような景色でした。
途中でポツポツと下車して、一番前に座っていたおじさんが降りたので
とりあえず一番前に移動してみました。
札幌市内のような混雑しているバスでは一番前は乗りませんが、
地方のバスや観光バスでは一番前が景色がよく見えて楽しいです。
バスは途中、後ろに車が追いつくと道を譲りながら、
時速40〜50kmほどで、ゆっくりゆっくりと進んでいきました。
車窓に映る海が本当にきれいでした。
山を見ながら生まれ育った僕にとって、山は身近な存在ですが、
海というのはなかなか行けない特別な場所でした。
だから海をずっとずっと見ていられるのは、なんだかとても幸せです。
途中、海沿いの国道から左折してアポイ山荘に立ち寄ります。
ここで残りの人たちも全員下車。
乗客は僕ひとりになりました。
一番前に乗っていたので、運転手さんが振り返って、
「えりも岬までかな?」と聞いてきました。「ハイ」と答えると、
その後は「次は○○です」の車内アナウンスが一切なくなり、
まるで僕一人だけの貸切バスのようになりました。
たった一人だけの乗客を乗せて、バスは再び海沿いを走ります。
車内アナウンスがなく、また、誰一人として乗ってこないので、
車内はとっても静かです。
バスに揺られながらゆったりとした時間が流れていきます。
こういうとき、みんなは何やってるのかな〜なんて考えたりします。
同じ土曜日、同じお昼時、同じ日本・・・。
なのにこんなに時間の流れが都会と田舎で違うもんなんだなぁ・・・と、
北海道のローカル線の旅をしていると、つくづく思い知らされます。
バスは様似町から、えりも町へと入ってきました。
久しぶりに家並みが見えてきました。
強風のため、木々が育たず、原野の中に家が建っている感じです。
その様子は、同じ北海道でも札幌の街並みとはやはり違い、
日本ではない場所にやってきたような錯覚に陥ります。
右手には相変わらず太平洋が広がっていますが、
左手には険しくそびえ立つ日高山脈が次第に近付いてきます。
国道336号線。
バスはこの道をひたすら走ります。
道はえりも岬から先も続いており、
広尾や帯広へと行くことができます。
バスはえりも町の中心街へと入ってきました。
この前後で数人の乗降があり、車内アナウンスが久しぶりに復活。
これだけ果てまでやってきても、こうして普通に商店街があることが、
なんだか不思議に感じてしまいます。
車の往来も一気に増えて、車窓の風景は賑やかになりました。
10分も走ると、乗客もすべて降りてしまい、再び貸切状態に。
車窓にはふたたび家並みが消え、何もない場所を走ります。
国道336号線から、道道34号線に入り、
次第に目的地のえりも岬が近付いてきました。
晴れていますが、風が強いらしく、
ゴーゴーという風の音がバスに吹き付けます。
車窓は笹原と背丈の低い木々だけが丘のように続いており、
まさに「果て」の名にふさわしい車窓になってきました。
風力発電が見えました。
このあたりは風が非常に強いので、
さぞかし電力を稼ぎ出してくれるでしょう。
車窓の右手にも海が見えてきました。
両側を海に囲まれてくると、まもなくえりも岬に到着です。
「えりも岬」に到着しました。
バスは唯一の乗客である僕を降ろして、
空っぽになって終点の岬小学校へと走り去っていきました。
札幌から実に6時間かけて、ようやく到着です。
駐車場には車が1台も止まっていませんでした。
観光客ゼロ。天気のいい土曜日だというのに、このありさまです。
初日の出イベント後、日付がそのままの観光センター。
冬の間はお店も一軒もオープンしていません。
バス停から5分ほど歩いて、ついにえりも岬に到着!
「あぁ〜はるばるやってきたー!」という充実感でいっぱい。
東からと西からと両方の波がぶつかり合い、
激しく波しぶきがあがっています。まさに「岬」の名にふさわしい風景。
聞こえてくるのは波の音だけ。観光客も誰もいない。
この誰にも邪魔されない完全孤独な感じが、
またなんともいえない旅情をそそるのです。
展望台からさらに先へと岬は延びています。
あの先っぽに立ちたいなぁ〜と思い、行ってみることにしました。
岬の先端へと向かう階段はけっこう急です・・・(汗)。
下から吹き付ける強烈な風がさらに恐怖感をそそります。
強い風に身体をあおられながら、
遊歩道を前へ前へと進んでいきました。
写真で見ると青空で穏やかそうですが、
実は身体ごと吹っ飛ばされてしまいそうなほどの強風で
耳がちぎれるほど寒かったです。
そしてようやく岬先端の展望台に到着。
水平線いっぱいに青い海がどこまでも続き、
地球が円いんだ・・・ということを実感できます。
先端まで来たので、より波しぶきの音が激しく聞こえてきます。
日高山脈の山並みがここ、えりも岬で海へと沈んでいくのです。
吹き付ける強い風と高い波。
誰かの唄で歌われているように、本当に何もないのですが、
僕はこの岬の荒涼とした雰囲気が大好きです。
展望台を降りていくと、さらに先まで行くことができます。
何かの慰霊碑のようなものが建っていました。
振り返れば、日高山脈が険しくそびえ立っています。
今日は天気がよかったので、山頂までよく見ることができました。
カモメも風に乗って飛んでいます。
何度も何度も同じところを飛んでいました。
しばし海を眺めていましたが、バスの時間が迫ってきたので、
そろそろ来た道を戻ることにしました。
振り返ると、岬の崖になっている部分がよく見えます。
崖の上にあるガラス張りの建物は「風の館」という施設で、
えりも岬の景色を暖かい中で見ることができるのはもちろん、
風速25mの強風を体験できるコーナーなどもあるようです。
バス停に戻ってきました。僕が乗るのは13:23の便です。
えりも岬では約50分の滞在時間があるので、
景色を眺めるだけならちょうどいい時刻が組まれています。
僕の乗るバスがやってきました。
来るときに終点だった「岬小学校前」から折り返して来るバスなので、
運転手さんも同じです。
バスは当然のように貸切。
土曜日なのに、こんなんで大丈夫なのかなぁ・・・と
こちらが心配になってしまうほどの乗車率です。
しかし、このバスもえりも町の商店街に近付くに従って乗客が増え、
さらにアポイ山荘で、さっき降りた人たちが全員乗ってきたので、
様似駅に着く頃には、乗客も5人ほどに増えていました。
様似駅に戻ってきました。
15分ほど時間があったので、
駅前のコープ様似店でちょっと遅めの昼食を買い込んでから
車内に乗り込みました。
始発駅にして、すでに海側はすべて満席。
といっても、ボックスに一人ずつ座ってるだけですけどね。
僕は次は新冠駅で降りるので、おとなしく山側に座りました。
列車は定刻に様似駅を発車。
再び苫小牧を目指して、長い長い旅が始まります。
様似から新冠までは1時間半ほど。
ボックス席に足を延ばして、缶コーヒー飲みながら、
ゆっくりと移りゆく車窓を見ていると、ほんのり眠くなってきました。
絵笛駅は駅前が牧場です。
きっと緑の季節になったら、もっときれいだろうなぁと思います。
馬たちが元気に雪の上を走り回っていました。
本桐駅で列車の行き違い。
反対側にやってきた様似ゆきは、
日高本線にしては珍しく青くないキハ40系でした。
ウトウトとしていると、あっという間に新冠駅に到着。
静内から乗り込んできた、たくさんの高校生たちと一緒に降りました。
新冠で降りたら、向かうは最後の目的地、温泉です。
最近は旅に温泉は欠かせないものとなりつつあります。
特にこういう寒い季節には、最後に温泉に入ると気持ちいいですね。
駅から新冠温泉「レ・コードの湯」に電話をして迎えに来てもらいます。
僕は携帯にすでに電話帳登録してあるのですが(笑)、
駅の中にも「お気軽にお電話下さい」と大きな広告が出ているので、
いきなり新冠駅を訪れても大丈夫です^^
宿からの車を待つ間は、駅の待合室で寒さをしのぎます。
新冠駅は完全な無人駅なのに、
駅がとってもきれいで暖かいのが特徴的です。
待合室の中にはレコードの街、新冠町らしく、
優しいレコードの音楽が流れていてホッとできます。
宿の送迎バスに揺られて5分。
新冠温泉「レ・コードの湯」&「ホテル・ヒルズ」に到着です。
入口に券売機があるので、500円の入浴券を買って中に入ります。
木の温もりが感じられる広々としたエントランスがお出迎えです。
窓の向こうには牧場と太平洋が見渡せて、
この温かみのある雰囲気が僕はとても大好きです。
お風呂からの眺めもまた最高。
これは脱衣所からの風景ですが、手前に牧場、
奥には新冠の街並みと太平洋が広がります。
露天風呂では立ち上がらないと景色が見えませんが、
内湯は一段高い場所にあるので、温泉に浸かりながら
沈みゆく夕日を眺めることができます。
お湯は掛け流しではなく循環式ですが、
とろんとした肌に優しいアルカリ性の温泉で、長湯ができます。
僕も海を見ながら、だいぶ長い時間入っていました。
温泉から夕日が沈んでいくのをひたすら眺めていました。
とっても静かで贅沢な時間だと思いました。
温泉から出ると、外はすっかり暗くなっていて、
町の明かりが輝き始めていました。
帰りの送迎もフロントの方にお願いして、
それまで湯上がり処でマッタリ。
あぁ、このまま隣接するホテルに泊まって行きたい気分です。
こんなにいい施設なのに、夜になるとやっぱりガラガラ。
北海道の温泉施設は全体的に夜が早いです。
新冠駅まで送ってきてもらいました。
500円で駅から送迎までしてくれて・・・というのは、
本当に素晴らしい温泉施設です。
いつか宿泊で訪れてみたいなぁと思っています。
新冠駅からはふたたび日高本線に揺られて
さらに1時間半でようやく苫小牧です。
最後は苫小牧から札幌圏ではお馴染み721系に乗って札幌へ。
日高本線のキハ40系から乗り換えると、
あっという間にこちらは時速120km運転で、
ものすごい速く感じました。さすが電車です。
札幌からの日帰り旅行、今回はえりも岬まで行くことができて、
とても充実した旅になりました。
こういう旅が、車を持っていなくても日帰りでできることを、
僕は本当に幸せなことだと思います。
札幌駅に着く頃には心地よい旅の疲れが、眠気を誘い、
部屋に帰ってからは、倒れこむようにぐっすりと眠りました。
旅日記は以上で終わりです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!



[ トップページに戻る ] [ 旅日記トップページに戻る ]
inserted by FC2 system